彼女は懐かしむような目をした後、私の目をしっかりと覗き込んで言った。

「呪いの言葉、お忘れなさい。……そうね、私が魔法をかけてあげる」

 そう言うと、カイは襟のリボンタイを引き抜く。
 そして「失礼」と言うと、私のリボンタイを外し、サッと交換した。

「あ……」

 至近距離でいい匂いがする。
 リボンのホックを首の後ろで留めながら。
 唇が触れそうな距離で見つめて、カイはニコリと微笑んだ。

「いいこと? このリボンはお守りよ。……あなたが、堂々とした立派な女魔術師になるための」
「……いいの……?」
「ええ。お守りは大事よ。心を強くしてくれる。……私も、お守りがあるもの」

 リボンをつけ終わり、軽く整えて彼女は離れる。
 そして首のチョーカーに軽く触れたのち、彼女は眉を下げて優しく笑う。

 姿勢を正し、とても綺麗な所作で私に辞儀をした。

「私の名前はカイ。コーデリック公爵の娘ということになっているわ」
「カイ様……」
「カ・イ」
「はっ……! カ、カイ! よろしくね、カイ!」
「ええよろしくね。フェリシア。仲良くしましょう」

 私たちは改めて、きちんと握手を交わす。