綺麗な人だなぁ。
いやいやいや、明らかに不審者でしょ!
警察に連絡、?
そう思い、スマホのサイドボタンを押すと___
「待って待って、何してんの」
「え、いや、警察…」
「えぇ?!不審者じゃないって!!」
「そう言われましても、、あなた誰ですか」
純粋な疑問を投げかけると、
「あ、あぁあぁ。そうだったね。そっか。
私の名前は遠藤華奈!最近このお店でバイトしてるんだ〜」
自信満々に自分を紹介する遠藤さん
すると
「で?君は?」
「え?」
「え、って笑私は言ったよ?」
「いや、話しかけてくるぐらいなので知っているのかと…」
「あはは笑もちろん、
知ってるよ」
「ですよね、え?!本当に知ってるんですか?!」
何事もなくさらっと言うものだから驚いた
「なにさ、君が知ってるか聞いたから言ったんだよ。いきなり知ってると言われても困惑するでしょ?」
そ、そうか
いやそうかじゃないって。
「なんで知って…」
「うーん、まぁ色々。」
「は、はぁ?」
曖昧に笑う遠藤さんが本当にストーカー等の類かと疑い始めた頃、
「とはいえ、そんなに知っているわけじゃないんだけどね。名前は瀬名庵。17歳。そこの高校に通ってる。
あとはー10歳の頃、アイワールド症候群に罹っていた。」
急に神妙深い顔でそう言った。
「な、んでそれ、を、」
何故、この人がそのことを知っているのだ。
僕でさえ、その頃の話は両親伝えで知ったと言うのに。
「それはね、君が君の世界を思い出した時分かるはず。」
「っは、?」
アイワールド症候群とは
自分の世界を1から作り上げ、その中で生きてしまう精神病だ。
その病を身にすると目に映るもの、耳で聞こえる音などが、全く別のものなってしまう。
つまり幻覚幻聴が激しくなるのだ。
そしてその患者が作り上げている世界が 【アイワールド】と呼ばれる。
ほとんどが幼少期に起こるが稀に思春期にも起こるらしい。
無理に治療をすると、現実世界とアイワールドとのギャップで深刻な鬱に陥ってしまい、最悪の場合自決をしてしまう。
「あの病を綺麗に治すには、アイワールドを完全に消し去らなければならない。それは忘れると同義。」
「そう、です。それを、どうして思い出させようだなんて、あなたは、一体、」
どくどく
どくどくどくどく
鼓動が早くなっている。
「私は一体何者…かぁ。それはイオリが私と話す時のログインボーナスのようなものにしよっか。」
「毎日会えば、教えてくださる…ってことですか」
「うん。」
優しく、優しく笑った
なんだかその笑顔に引きづり込まれているような感覚だ。
だって、もう忘れてしまった2年間なんて、いらないのに。
目の前の人が誰かなんて知らなくていいのに。
どうして、僕は。
「混乱してるよね。でも、いっぱい考えて。イオリ」
そう言われて、僕はぼんやりしたまま家に帰った。
僕があの頃を思い出しても、出てくるのは花の香りだけだ。
