大好きな華は返り咲く





運命の出会いじゃなくていいから、素敵な出会いがいい。
終礼のチャイムを聴きながらふと思った。

運命の人とか、人生を共にするパートナーとか、最近そう言うことを考えてしまうのは、毎朝赤い耳を見ているからだと思う。


お互いの一目惚れだとか
両方思いの拗らせだとか。


「おーい、イオリくーん?」
スクバを肩にかけたぐっちに声をかけられる

「ぼーっとしてなんだよ。好きなやつでもできたか?」

少し掠っていることがなんだか癪で
「いや、ぐっちが芹沢と帰んないのかなって思ってさ」

教科書を机の中に乱雑に入れながらそう言う
「お前までかよ…しーらね」

1日中からかわれて疲れ切っている彼に追い討ちをかけるのは酷だったか
(アキラ)に声をかけてさっさと行ってしまう

「冗談じゃん、」

軽いスクバを抱えて追いかけた




僕とぐっちと輝は部活がなく、慌ただしく部活へ向かうしゅうたちを見送ってから帰路に着く

担任の先生が今日はうざかっただとか、明日の体育は走りたくないだとか。

愚痴と笑いが時間と足を進めていく

「じゃぁ、またな」
「おぅ連絡しろよ〜」
「うん、わかったよ。じゃあね」







バキッ

「おーいそこの少年ー」

少し低めの声
別れた道からすぐのところに花屋の入り口の小さな椅子から声が聞こえた

「?僕…ですか?」

あたりを見回しても誰もいない
頬杖をついて何か興奮が抑えられないと言うようにまた口を開いた

「君しかいないじゃないか〜。

突然ですが君にクイズです

この花は『枯れてしまった』でしょうか!『死んでしまった』でしょうか!」


「、??」


バキッ


出題者がワンピースを着た綺麗なお姉さんでなければ僕は走って逃げていたかもしれない


お姉さんが指差した先には茶色く|爛《ただ
れた花


突然の異世界からの質問にきちんと思考できたことが、まるでその質問は事前ダウンロードされていたように思えた。


「…枯れてしまった」

「流石!せいかーい!」

花に対して『死ぬ』という表現はあまり使われないだろう


バキッ


いつものおばさんが、花の茎をハサミで切る音が響いた


明るく言われた


せいかーい


目の前の顔はニヤニヤと何かを溢れ出せている