「このまま生きる気力がなければ、長くは生きられないでしょう」

だなんて、目の前に本人がいるのに言うだろうか。

酷いじゃないか、生きる気力なるものを奪ったのは、この世界じゃないか。

それなのに、あたかも私に生死が委ねられているかのような口ぶりを。


後ろの母は、ただ一言

「そうですか…」

憔悴しているのか、ただ興味がないのか
ここ最近、彼女の顔を見ていない

ただ毎夜、私に夢の側でお金の話を唱えている。


「もう死なせてください…」


乾いた口から懸命に出した声はカスカスで。


医者の「そうですか」
と母の鼻をすする音が重なった



病室は一番上の階へ移された
もう見込みのない人たちが集う場所。
元々私がいた病床よりも空気は澄んでいる


「あぁ…」
死ぬんだな

この枯れた世界で。





「おかあさん、あの人枯れてるよ」

飛び込んできた色の声
病室のドアをあけっぱなしにしていたのか


枯れている、か

皮肉だな
「せいかーい」