〇宝山マンション・桜庭家・リビング(夜)
咲良(宝山游からプロポーズ(?)されてから)
(すっかりその気になったママを筆頭に)
(私は結婚準備を始めていた)
ゆき子が感動した顔でリビングを見渡している。
たけるも嬉しそうに走り回っている。
20畳もありそうな、広々としたリビング。
ゆき子「すぐに、こんないいマンションを用意してくれるなんて!」
咲良(ここは、宝山財閥所有のタワマン)
(警察にも不審に思われないよう、とりあえず宝山游の言う通りここに引っ越してきたんだけど……)
青ざめて、ぶるっと震える咲良。
咲良(これ……もし、私との勝負ですぐアイツが勝ったらどうするんだろう)
ぽいっと捨てられる咲良・ゆき子・たけるを思い描き……
咲良(絶対負けられないじゃん……!)
半泣きで、勝利を誓う咲良。
そこへ、「ピンポーン」とインターフォンが鳴る。
咲良「はーい」
ドアを開けると、私服姿の游が入って来る。(清潔感のあるシャツとパンツ姿)
游「差し入れだ」
游が手にしていたのは、抱えるほどたくさんのドーナツの箱。
咲良「多っ……!」
たけるは、「わーい」とさっそくドーナツの箱を開け、ゆき子もにこやかにたけるの世話をしている。
その様子を遠目に見ながら、咲良は游と話している。
咲良「ここまでしてもらわなくていいのに」
游「気にするな。ちょっと買い過ぎたから、やる」
咲良「ああ……そうなの?」
咲良(金持ちの買いすぎは、桁が違うな……)
咲良「あの、ご両親との顔合わせのことなんだけど……」
游「それが急に、しばらく海外へ出張することになってな」
游「このことは全部伝えて、快諾ももらえてる」
咲良「そうなんだ」
少しほっとする咲良。
咲良「じゃあそれまでに、いろいろ準備しておかないとね」
游「そうだな」
游「あ、あと。大学進学に有利になるよう、学校の編入手続きもしておいた」
咲良「……」
咲良「はい??」
急展開についていけず、目を瞬かせる咲良。
〇宝山学園高等学校・外観(朝)
きらきらと輝くように綺麗で立派な、私立高校の外観。
咲良(友達と離れ離れになるのは寂しいけど……)
〇同・廊下(朝)
咲良(まさかあの、宝山学園の美術科に入れるなんて!!)
絵画が飾られている、ピカピカの廊下。
咲良(私が編入したのは、宝山財閥の先代が創立した『宝山学園高等学校』)
(宝山家は代々芸術関係の事業にも力を入れていて)
(この美術科は、将来有望な芸術家達が集うことで有名なのだ)
咲良(大嫌いだけど……ありがとう、宝山游!!)
(しっかり、学ばせていただきます!)
意気揚々と、目を輝かせて歩いている咲良。
咲良の横にぴったりと寄り添うように後ろから来る游。
それに気づく咲良。
游「どうして勝手に家を出た」
游「迎えに行ったのに」
咲良「さすがに、送り迎えまでしてもらうわけにはいかないよ」
咲良「あの立派な車も、目立つし……」
游「だから、その、勝手に行かれるのは、なんというか……」
游、うまく言葉にできないままさっさと歩き出す。
咲良「寂しい……わけないよね?」
游「!!」
游、前を向いたまま顔を赤く染めている。
が、すぐにぷいとそっぽを向き。
游「そんなわけあるか」
游「やっぱり朝は、一人で行け」
咲良には、頬を染めている游の顔は見えず……。
咲良(やっぱヤなヤツ~!!)
咲良(だけどこのイジワル男が……)
周囲の女子達は、咲良をじとっとした目で見ている。
咲良(めちゃくちゃモテるとは……!)
鋭い視線をいくつも感じ、背筋がゾクリとなる咲良。
カッコいい游の横顔をちらっと見る咲良。
咲良(よく見たら……顔もいいし)
(成績も優秀で、生徒会長もしてたら……)
(モテるのも、当たり前なのかもしれないけど……)
納得いかない様子の咲良。
咲良(皆、コイツの本性を知らないんだ)
と、密かに思う咲良だった。
〇同・3年A組教室内
絵具を床に落としてしまった咲良。
拾おうと手を伸ばしたが、
その絵具が、誰かの足によって蹴られる。
絵具を蹴った女子生徒が、くすっと笑いながら咲良を見下ろす。
女子生徒「あ、ごっめーん」
周りも、くすくすと笑っている。
咲良(転校初日なのに、さっそく孤立しちゃったな)
ショックながらも、まあ仕方ないという感じで絵具に手を伸ばす咲良。
が、咲良よりも先に絵具を拾う男の手。
顔を上げると、游が絵具を拾っていた。
游が、絵具を蹴った女子生徒達を振り向く。
游「こいつ、俺の婚約者なんだ」
游「悪いけど、いじめないでくれるか?」
女子生徒達、途端に顔を赤らめ体をくねらせる。
女子生徒「そ、そんなぁ~。いじめたなんてぇ~」
咲良の肩を抱く游。
游「行くぞ」
寂し気な顔をする女子生徒達に見送られながら、肩を抱かれたまま歩く咲良。
咲良「(小声で)は、離してよ」
少し頬を赤らめながらも本気で嫌がる咲良。
游も傍から咲良に耳打ちする。
游「俺がくっついていれば、嫌がらせもされないだろ」
はっとする咲良。
咲良(コイツ、わかってやってるんだ……)
游「モテて悪いな」
ニヤッと笑う游に、カチンっとくる咲良。
咲良(やっぱ嫌い!)
そこに、咲良の腕をぐいと引く誰か(由乃)の手。
咲良がはっと顔を上げると、満面の笑みの姫川由乃(ひめかわ ゆの)(17)の顔が飛び込んでくる。
由乃「咲良ちゃんでしょう! うわ~、久しぶり!!」
・由乃…天真爛漫な、ザ・お嬢様な見た目。
咲良「もしかして……」
咲良「由乃ちゃん!?」
由乃「そうだよ、姫川絵画教室の、姫川由乃!」
〇回想・イメージとして
咲良(姫川由乃ちゃん。姫川絵画教室の、姫川先生の娘さんだ)
姫川美山(ひめかわ びざん)(35)先生。顔は整っており、髪を後ろで束ねている。芸術肌な男性。
その娘である、由乃(8)と、仲良く絵を描いている咲良(8)。
咲良(あの頃も仲良くしてたけど)
〇回想ここまで
咲良(まさか、また会えるなんて!)
懐かしそうに手を取り合う由乃と咲良。
咲良「なんで由乃ちゃんがいるって教えてくれなかったの!?」
游「今日、紹介しようと思ってた」
由乃「だけど、まさか游くんの婚約者が咲良ちゃんだったなんて!」
由乃「あの頃、すっごく仲悪くなかった!?」
咲良「ほんとだよね……いや、実はさ」
話を止めようと、ごほんと咳払いする游。
游「昔は昔」
游「今は今」
と、咲良の肩をぐいと抱き寄せ、こめかみ辺りに軽くキスをする游。
カーっと顔が赤くなる咲良。
由乃「ほんと、今は仲良しなんだね~♡」
游「そういうわけだ。じゃ、俺ら行くから」
と、游は咲良の肩を抱いて歩いていく。
咲良「(小声で)な、何すんのよ……」
游「だって、本当のことがお父様に伝わったら大変だろ」
游「援助も全部なかったことにされる」
咲良「そ、それもそうだけど……」
咲良(いきなりそんなことされると、心臓に悪いからやめて~!)
ひそかに、ドキドキする胸をおさえる咲良だった。
咲良(宝山游からプロポーズ(?)されてから)
(すっかりその気になったママを筆頭に)
(私は結婚準備を始めていた)
ゆき子が感動した顔でリビングを見渡している。
たけるも嬉しそうに走り回っている。
20畳もありそうな、広々としたリビング。
ゆき子「すぐに、こんないいマンションを用意してくれるなんて!」
咲良(ここは、宝山財閥所有のタワマン)
(警察にも不審に思われないよう、とりあえず宝山游の言う通りここに引っ越してきたんだけど……)
青ざめて、ぶるっと震える咲良。
咲良(これ……もし、私との勝負ですぐアイツが勝ったらどうするんだろう)
ぽいっと捨てられる咲良・ゆき子・たけるを思い描き……
咲良(絶対負けられないじゃん……!)
半泣きで、勝利を誓う咲良。
そこへ、「ピンポーン」とインターフォンが鳴る。
咲良「はーい」
ドアを開けると、私服姿の游が入って来る。(清潔感のあるシャツとパンツ姿)
游「差し入れだ」
游が手にしていたのは、抱えるほどたくさんのドーナツの箱。
咲良「多っ……!」
たけるは、「わーい」とさっそくドーナツの箱を開け、ゆき子もにこやかにたけるの世話をしている。
その様子を遠目に見ながら、咲良は游と話している。
咲良「ここまでしてもらわなくていいのに」
游「気にするな。ちょっと買い過ぎたから、やる」
咲良「ああ……そうなの?」
咲良(金持ちの買いすぎは、桁が違うな……)
咲良「あの、ご両親との顔合わせのことなんだけど……」
游「それが急に、しばらく海外へ出張することになってな」
游「このことは全部伝えて、快諾ももらえてる」
咲良「そうなんだ」
少しほっとする咲良。
咲良「じゃあそれまでに、いろいろ準備しておかないとね」
游「そうだな」
游「あ、あと。大学進学に有利になるよう、学校の編入手続きもしておいた」
咲良「……」
咲良「はい??」
急展開についていけず、目を瞬かせる咲良。
〇宝山学園高等学校・外観(朝)
きらきらと輝くように綺麗で立派な、私立高校の外観。
咲良(友達と離れ離れになるのは寂しいけど……)
〇同・廊下(朝)
咲良(まさかあの、宝山学園の美術科に入れるなんて!!)
絵画が飾られている、ピカピカの廊下。
咲良(私が編入したのは、宝山財閥の先代が創立した『宝山学園高等学校』)
(宝山家は代々芸術関係の事業にも力を入れていて)
(この美術科は、将来有望な芸術家達が集うことで有名なのだ)
咲良(大嫌いだけど……ありがとう、宝山游!!)
(しっかり、学ばせていただきます!)
意気揚々と、目を輝かせて歩いている咲良。
咲良の横にぴったりと寄り添うように後ろから来る游。
それに気づく咲良。
游「どうして勝手に家を出た」
游「迎えに行ったのに」
咲良「さすがに、送り迎えまでしてもらうわけにはいかないよ」
咲良「あの立派な車も、目立つし……」
游「だから、その、勝手に行かれるのは、なんというか……」
游、うまく言葉にできないままさっさと歩き出す。
咲良「寂しい……わけないよね?」
游「!!」
游、前を向いたまま顔を赤く染めている。
が、すぐにぷいとそっぽを向き。
游「そんなわけあるか」
游「やっぱり朝は、一人で行け」
咲良には、頬を染めている游の顔は見えず……。
咲良(やっぱヤなヤツ~!!)
咲良(だけどこのイジワル男が……)
周囲の女子達は、咲良をじとっとした目で見ている。
咲良(めちゃくちゃモテるとは……!)
鋭い視線をいくつも感じ、背筋がゾクリとなる咲良。
カッコいい游の横顔をちらっと見る咲良。
咲良(よく見たら……顔もいいし)
(成績も優秀で、生徒会長もしてたら……)
(モテるのも、当たり前なのかもしれないけど……)
納得いかない様子の咲良。
咲良(皆、コイツの本性を知らないんだ)
と、密かに思う咲良だった。
〇同・3年A組教室内
絵具を床に落としてしまった咲良。
拾おうと手を伸ばしたが、
その絵具が、誰かの足によって蹴られる。
絵具を蹴った女子生徒が、くすっと笑いながら咲良を見下ろす。
女子生徒「あ、ごっめーん」
周りも、くすくすと笑っている。
咲良(転校初日なのに、さっそく孤立しちゃったな)
ショックながらも、まあ仕方ないという感じで絵具に手を伸ばす咲良。
が、咲良よりも先に絵具を拾う男の手。
顔を上げると、游が絵具を拾っていた。
游が、絵具を蹴った女子生徒達を振り向く。
游「こいつ、俺の婚約者なんだ」
游「悪いけど、いじめないでくれるか?」
女子生徒達、途端に顔を赤らめ体をくねらせる。
女子生徒「そ、そんなぁ~。いじめたなんてぇ~」
咲良の肩を抱く游。
游「行くぞ」
寂し気な顔をする女子生徒達に見送られながら、肩を抱かれたまま歩く咲良。
咲良「(小声で)は、離してよ」
少し頬を赤らめながらも本気で嫌がる咲良。
游も傍から咲良に耳打ちする。
游「俺がくっついていれば、嫌がらせもされないだろ」
はっとする咲良。
咲良(コイツ、わかってやってるんだ……)
游「モテて悪いな」
ニヤッと笑う游に、カチンっとくる咲良。
咲良(やっぱ嫌い!)
そこに、咲良の腕をぐいと引く誰か(由乃)の手。
咲良がはっと顔を上げると、満面の笑みの姫川由乃(ひめかわ ゆの)(17)の顔が飛び込んでくる。
由乃「咲良ちゃんでしょう! うわ~、久しぶり!!」
・由乃…天真爛漫な、ザ・お嬢様な見た目。
咲良「もしかして……」
咲良「由乃ちゃん!?」
由乃「そうだよ、姫川絵画教室の、姫川由乃!」
〇回想・イメージとして
咲良(姫川由乃ちゃん。姫川絵画教室の、姫川先生の娘さんだ)
姫川美山(ひめかわ びざん)(35)先生。顔は整っており、髪を後ろで束ねている。芸術肌な男性。
その娘である、由乃(8)と、仲良く絵を描いている咲良(8)。
咲良(あの頃も仲良くしてたけど)
〇回想ここまで
咲良(まさか、また会えるなんて!)
懐かしそうに手を取り合う由乃と咲良。
咲良「なんで由乃ちゃんがいるって教えてくれなかったの!?」
游「今日、紹介しようと思ってた」
由乃「だけど、まさか游くんの婚約者が咲良ちゃんだったなんて!」
由乃「あの頃、すっごく仲悪くなかった!?」
咲良「ほんとだよね……いや、実はさ」
話を止めようと、ごほんと咳払いする游。
游「昔は昔」
游「今は今」
と、咲良の肩をぐいと抱き寄せ、こめかみ辺りに軽くキスをする游。
カーっと顔が赤くなる咲良。
由乃「ほんと、今は仲良しなんだね~♡」
游「そういうわけだ。じゃ、俺ら行くから」
と、游は咲良の肩を抱いて歩いていく。
咲良「(小声で)な、何すんのよ……」
游「だって、本当のことがお父様に伝わったら大変だろ」
游「援助も全部なかったことにされる」
咲良「そ、それもそうだけど……」
咲良(いきなりそんなことされると、心臓に悪いからやめて~!)
ひそかに、ドキドキする胸をおさえる咲良だった。
