でも、そんなダークな感情も新しく通うことになる学校につけば、かき消されていった。今はもう、新しい学校生活に心を躍らせている。

 毎年恒例の四人のクラス確認のために生徒玄関の前まで歩いて行った。

 そこにはまだまだ人がたくさんいて、女子の平均身長である私と、私よりも背が低い晴南は背伸びしても掲示が見えない。

 二人してムー、と頑張っていると、いつの間にか私よりも背が高くなっていた由宇斗がつぶやいた。

「俺と柚華(ゆか)、おんなじクラスだ」

 あまりにも嬉しそうに言うもんだから思わず『へっ……』と情けない声がこぼれる。

 由宇斗の報告に続いて将梧も『俺と晴南おんなじクラス』といった。

 見事に2-2で別れ、それぞれのクラスに向かう。

 私と由宇斗は四階の一番奥にある1-Aの教室に向かった。

 二人でしゃべりながら歩いている途中、何人もの視線を感じた。

 みんなが由宇斗のことを見て、騒いでいる。

 昔から由宇斗はモテていた。

 くせ毛で茶色がかったくるくるな髪。子犬みたいにキュルキュルしていて二重幅がパッチリな目。鼻筋の通った綺麗な鼻。ほんのりピンク色に色づく唇。

 幼馴染だからとかいうひいき目をなしにして見ても、由宇斗の顔は整っていた。だからこそ、由宇斗は昔から人気者だった。

 明るくてノリのいい性格も相まって、男子からも女子からも好かれていた。

 私はよく、そんな由宇斗のそばにいていいのか悩んでたっけ。

 小学生、中学生は四人で1セットみたいにみんなに認められていたから、その悩みも無理やり忘れて普通に接することができた。

 でも今日からは高校生だ。

 多感な時期で男女の友情なんてないものとして扱われる。

 いよいよ今まで通り接するなんて無理なのかもしれない。

 ついに子離れかー、なんて由宇斗の母親でもないくせに考える。

 そんなことを考えていたら、いつの間にか教室についていた。

 会話をしているときの私の適当な相槌に少し怒っている由宇斗と席を確認する。

 柳瀬と森里(もりさと)だから、今年も案の定、席は前後。

 もうここまでくると運命なのかもしれない。せっかく離れようと思ったのに、泣けてくる。

 自分の席について、私は由宇斗に話しかけられる前に隣に座っていた子と話し始めた。

 後ろからすごく不機嫌なオーラが放たれているけれど無視。『由宇斗も他の子と話しな』と心の中で話しかける。