『バンッ――!』

 私は目の前にあった扉を思いっきり開いた。

 そして、ベッドの前までドカドカと歩く。

 ベッドの上にはこの部屋の主人、柳瀬由宇斗(やなせゆうと)がいた。

「由宇斗、起っきろー!!」

 私は勢いよく由宇斗にかかっている布団をめくりあげた。

 でも由宇斗は一向に起きる気配なし。布団がなくてもベッドの上で丸まって、まだ寝ている。

 こんな由宇斗の姿も、一緒にいて十五年の私には見慣れたもんだ。

 こんなことぐらいじゃ起きないのを知っているから私は由宇斗の脇腹に手を突っ込んで、こしょぐり回す。

 ようやく起きた由宇斗の身支度を待って、一緒に外に出た。

 外には『遅い―』って言いながらスマホを触るかわいい女の子と、静かに本を読んで待つメガネ男子がいた。

 二人も私の幼馴染だ。女の子は、宮口晴南(みやぐちはるな)。そして男の子は、宇佐美将梧(うさみしょうご)という。

 この四人で登校するのもいつも通り。

 でも一つだけ違うことがある。それは今日から晴れて高校生だということ。

 私たちが今から向かう如月(きさらぎ)高校は、この辺では有名な進学校。学力も性格も全く違う四人だけれども、一緒の高校がいいということになり、私と由宇斗はぎりぎりで、見かけによらず頭のいい晴南と予想通り頭のいい将梧は余裕で合格した。

 そして今日が、私たちが華の高校生となる一日目なのである。

 待ちに待ったjkライフ。部活で表彰なんかされて、男子からも女子からもモテモテに。でも隣には学校一のイケメンの彼氏が……。

 なんて妄想に明け暮れてにやにやしていると、急に腕を引っ張られた。

 か弱い女の子に何すんだよ、と私の腕をつかんだ将梧をにらむとすっごい冷たい顔をされた。

 ――え、なんで。

「お前、前見て歩けよ。赤信号なんだけど。浮かれすぎ。にやにやしすぎて気持ち悪い」

 一応、助けてくれたらしい。

 でもそれ以上に悪口を言われた気がしたので反撃に出ようと口を開くと、ちょうど信号が青に変わった。

 せっかくの勢いが消され、数秒立ち止まった私。その横を『言われちゃったねー』と言いながら通り過ぎる晴南と、鼻で笑いながら歩く由宇斗。

 ムカーとしたけれど、立ち止まったままだと本当において行かれそうなので慌てて皆のもとへ駆けていった。

 学校へ向かう途中もぶつぶつと小言を漏らす私。それに将梧は『うるさい』と文句をつけてくる。