「そんなの、別に変えればいいんだよ。何事にも最初はある。お前が最初になればいいんだ。悪いが、香月のことは絶対譲らない。前からお前を絶対俺の手元に置くと決めていた」
「いやです!」
「落ち着け。本部で辛いことがあったと辰巳にも聞いている。でも、俺がいる限り、もうそういうことは起こらないし、起こさせない。香月のことは俺が全力で守ってやる」
崇さんが私を正面から見た。この目は本気だ。私はあまりのことに思わずむっとしてしまった。誰も私の意見を聞いてくれたためしがない。
専務だってひどい。知っていたならどうして教えてくれなかったんだろう。
何も言わずむっつりした私を見て心配そうにしている。彼の右手の人差し指が伸びてきて、私の眉間の間を触った。
「香月、どうした?怒ったのか?こんな所に皺寄せて、美人が台無しだぞ。久しぶりに会ったのに、そんな顔するなよ」
「大体、辰巳さんはどうされたんです?なぜ、一緒にいらしてないんですか?」