「君が専務秘書だったことはここでは内密にするから。上からそう言われている。それと、案件別に書類は分けておいてね。部長は二人いて、そこから稟議が上がってくる。まあ、君は秘書だったし、よくわかっているだろうから大丈夫だよね。よろしく頼むよ」
「はい、わかりました。稟議書は書類で上がってくるんですか?今はデジタル書類ですよね。支社は違うんですか?」
「もちろんデジタルで作ってそれで上がるけど、僕はパソコンで書類見るのが下手くそでね。見逃したりすると怖いから、一応書類として印字してもらってそれも上げてもらうんだ。すごいだろ。ダブルチェック。完璧だよ」
どこがすごいの?何それ?なんとなくわかった。支社長がパソコン苦手だということは、部長クラスも知っているはず。
嫌な予感がした。私がすべきことはなんとなく理解したので、笑顔を貼り付けて返事をする。
「はい。ではここにあるのからやっておけばいいんですね」
「そう。わからないことはそこにいる事務のチーフの高城佳奈美君に聞いて。彼女が君の仕事を今までしていたからね」
ガラス張りの支社長室で、フロアに見える茶髪の短髪の女性を指さした。