財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す


「真紀は自分のことを大事にして……。私を見ていてわかったでしょ。日傘専務もどうして私を置いていくんだろ。ひどいよ」

 私が顔を覆ったら、真紀は驚いて横に来て背中を撫でた。

「それにしても、菜々の元彼最低なんだけど……どうして菜々を捨てて黒沢さんと相変わらず親しいのよ!武田がぶんなぐってやるって言ってたよ。私も香月を何とかしてやれって怒られた。泣かないでよ、本当にごめん」
 
 伸吾は別れた翌日に、私と別れたことを周囲へ話していた。それで私は、秘書課内でそのことを詮索されてひどい目にあった。

 でも、退職願を出したし、もうどうでもいいとなげやりになっていた。退職日を決めてもらえば、このままあっという間にこの嫌なところとお別れだと我慢していた。

 するとその翌日の朝早くに、辰巳さんから打ち合わせ室へ来いと呼び出された。

「香月。こんなこと言ったらあれかもしれんが、斉藤と別れて本当によかった。あいつの本性がやっとわかったんだろ」

「確かにそうです。最初から辰巳さんに、斉藤はやめておけと言われていたのに私は馬鹿でした。でもこのことでスッキリしました」