三日後の朝、秘書室長に退職願を出した。私の顔を見た新藤秘書室長は驚いていた。
「いいんですか?」
頷いた私を見て、退職願の封筒を目の前においてしばらく黙っていた。せめて理由を聞かれたり、何か言われるのかなと身構えた。ところが、そんなこともなかった。
「そうですか……とりあえずお預かりします」
特に引き留めもしない。やっぱりねと思った。
「菜々、やめるって本当なの?」
昼休み、真紀に問い詰められた。すでに噂になっている。
「……うん。ごめんね」
「菜々、悪いのはこっちだよ。助けられなくて本当にごめん。どうしたらいい?私何したらいい?葛西専務に頼もうか?でも黒沢さん達にどうせ専務は何も言えないよね……」



