財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す


 辰巳さんは私の庇護者のひとりだったのだ。今思えば、辰巳さんを味方につけていることも御曹司を狙っていた人からすると妬みの対象だったんだろう。

「香月。少しだけ我慢しろ。俺も何とか出来るように今考えている……」

 辰巳さんは御曹司と海外へ行かなかった。そして……何故か今は総帥の仕事を手伝っている。

 昔から辰巳さんは総帥の意図を伝えるために御曹司の側にいたのかもしれないと今回見ていて気づいた。

「心配してくださってありがとうございます。でも、何もしてくださらなくて結構です」

 私は返信した。いつも私を庇ってくれていた人が黒幕の仲間だったかもしれない。

 本来、崇さんを裏切れないなら、専務を守らねばならなかったはずだ。

 でも辰巳さんは何もしなかった。出来なかったのかもしれないけど、専務を守れない人が私なんて守れるはずがない。

 だからこそ、私は今こうなっているのだ。この先どうなるかは大体想像がついた。