「……そうですか。じゃあ、いいです」
「おい、菜々!」
きびすを返して部屋を出ようとした私の腕を彼がつかんだ。
「言っておきますけど、口を挟むのはやりたくてやっているわけではありません。専務は崇さんの性格をご存じで、直接崇さんにおっしゃらないのは私を利用するためです」
「……菜々!」
「崇さんは芽の出た全ての苗を、自分から間引きはできない。清家に負けたくないという気持ちもあって、特に新分野の研究は全て手の内に入れようとするだろうと……おっしゃっておられました」
「確かにそうだ。その通りだが、清家だけではない、こういう新しい分野は最初に資金を援助したほうがあとで……」
「父のところのものに関しては……いくら私がいても、父は研究所内の会議で公平に決めると思います。父はそういう人です」



