財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す


「香月さん。悪いけど、この書類コピーして五セット作ったら会議室へ運んでおいてくれる?」

 黒沢さんのお仲間秘書から頼まれる。

「わかりました」

「香月さーん。こっちもお願い。あと、証紙を二千円分郵便局で買ってきてほしいんだけど……」

「はい」

「ちょっと、あなたたち菜々のこと顎で使うなんて何なの?自分のことは自分でしなさいよ!秘書は他の人に仕事を頼んだら基本いけないんじゃないの?」

 真紀が仁王立ちして秘書室で怒ってくれた。全くその通り。コピーだって内容を見られないように、基本他の人に頼むのはいけないことだ。

「あら、暇なんだからいいんじゃない。それに、香月さんなら誰にも話さないでしょ。信用してるから頼んでるのよね、みんな」