「お前の口が綺麗だから問題なし。辰巳、後は頼むぞ」

「はい」

 彼は私を立ち上がらせると手を繋いで出てきた。

「もう、何してるんですか?公私混同はいけません」

 彼はキョロキョロと周りを見ながら柱の陰に私を引き込んだ。

「お前と気持ちが通じて幸せでおかしくなりそうだ。あの父が夕べ君のことを褒めていたぞ。専務とお前を左遷したくせに……いい気なもんだ。菜々、ふたりで父さんに少し意地悪して反省させてやろう」

「先ほど聞いたのですが、日傘専務に直接お電話して私とのことをお話しになったそうです。その時専務から少し虐められたようですよ」

 彼は嬉しそうに私を見て言った。