専務は財閥に監査役員として残る道を提示された。しかしそれもすぐに断り、潔く辞めてしまわれた。

 専務からそのお考えを聞かされた翌日。私も一緒に辞めますと専務に言った。私は専務のお人柄がとても好きで、秘書として可愛がって頂いたこともあり、ついていきますと言った。

 専務はご親族の経営されている会社へ移ると説明してくれたのだ。

 ところが、私がそのことを言うと怖い顔をされた。

「君はまだ若いんだし、辞めるのだけは絶対ダメだよ」

 あっけないくらいすぐに却下された。

「それに、前に言った僕との約束を忘れてもらったら困るよ。いずれ君にはやってほしいことがあるからね」

「何ですか?」

 ニヤリと笑う専務は私にこう言った。