「もう済んだことだ。忘れるんだ。いいね」

 私も彼の身体にすがりついた。

「菜々。船を下りたら俺のマンションへ来ないか?明日までゆっくり二人っきりで過ごしたい」

「いいの?」

「もちろん。もっと一緒にいたいだろ」

「うん。今日は一緒にいたい。全部忘れたい」

「ああ、忘れさせてやる」

 彼は私を優しく抱き寄せた。