そっと私の肩を抱き寄せた。彼が私の顔をのぞき込む。
「そんなわけあるか。初めて話した頃から、君に惹かれていつか自分のものにしたかった。専務には俺の気持ちは筒抜けだったんだ。君をいつも目で追っていたからね。総帥になる準備を始める頃になって、まず秘書としてなら君を預けてもいいと言って下さった」
「……崇さん」
「俺の縁談だが、公になっていないものも含めると相当数あった。清家のところは身を固めることが継承の条件だったし、両親は僕達が同級生なのもあって、ライバル心があるんだ。それで玖生の結婚をあちらの総帥に聞いて、負けたくなかったんだろう、相手を好き勝手選び始めた。知ってるだろ?」
「……はい」
「君に告白するため当時は必死で縁談をかたづけていたんだ。ところが横から斉藤が君をさらった。最初言っただろ。幸せそうに見えたって。失恋したと思ったが、斉藤がライバルなのに諦めるのは違うと思ってね。海外から戻ったら仕切り直すつもりだった。ところがアメリカで辰巳に確認したら、君は本部を追われていた。手元に取り戻すことで頭がいっぱいになった」
「崇さん……」



