黒沢さんは崇さんから目をそらした。そしてちらっと私を見て、落ち着きなく手を動かしている。
「そこってどこですか?」
崇さんが私の方を向いて言った。
「香月。お前のことを最近までよく知っていた人物がいただろ。プライベートで無防備な姿を見られたり、専務の部屋にいるとき、お前を捜してもしかして入ってきたりしていなかったか?」
私はやっと気がついた。そうだ……伸吾はキーホルダーを知っている。彼は私が帰る間際に専務室横の私の所へ迎えに来たことが何度かあるので、鍵を出して閉めているところを見られている。もちろん秘書だったし、まさかそういう機密をどうこうするとは思っていなかった。
「まさか、伸吾……斉藤さんですか?」
黒沢さんは諦めたんだろう。不思議な笑みを浮かべた。



