「ただ……知っていただけです」
「そんなわけない!私が役員室の中の席にいるときあなたが来たことないですよね。鞄はロッカーですけど、そのポーチは常に別で持っていました」
すると崇さんが言った。
「言いたくなかったが、もしかすると……」
黒沢さんは怯えた目で彼を見た。
「父が君を僕の縁談相手から外した理由が実はある。君の私生活は少し父が調べていたんだ。よくあることだが、父親は娘の本当の姿を知らないことが多い。調べた結果、気になることがあった。だが、君の父上との付き合いもあり、秘書課を辞めさせることはしなかった」
黒沢さんはビクッと動いた。
「もしかして……そこから聞いたんじゃないのか?」



