ガタンと音がした。覗くと黒沢さんが立ち上がっている。
「わからないって何?どうして彼女はわからなくて私はダメなの?大体、総帥は私をあなたのお嫁さん候補として秘書課へいれたはずよ。知っていてそんなことをどうしておっしゃるのかわからないです」
「俺は君にそういう素振りも見せたことはないはずだ」
「そうよ、だから香月さんにばかり優しくするから仕返ししただけ」
「馬鹿馬鹿しい。彼女に仕返し?それが盗み?どうかしてるだろ」
「ふたりとも落ち着いて下さい。それで黒沢さん。その机の鍵はどうやって……大体どうして知っていたんです、鍵の場所とか……」
「羊のキーホルダーについているというのは知っていたし、かばんのポーチに入れているというのも……」
私は聞いていて青くなった。どういうこと?彼女の前で鞄を開けたことはない。それに、秘書課の机の鍵は別なキーホルダーにつけている。崇さんの部屋の隣の秘書デスクとその後のチェストの鍵が羊のキーホルダーについているのだ。



