辰巳さんの声しかしない。黒沢さんもいるの?見えない。でも顔を出すとここにいるのがばれてしまう。私は我慢した。
「……さてと。辰巳に聞いたが、招待状は君が盗んだそうだな。どうしてこんなことをしたのか、どうやって盗んだのか、全て教えてもらおうか」
「……」
黒沢さんの声がしない。ヒックヒックとすすり泣きが聞こえた。
「先ほど彼女から聞いたことを先に私から報告します。まず、香月が目障りでどうにかして崇さんの秘書をやめさせたかったから、郵便物を取ることを計画していたそうです」
「目障りね。ひとつ言っておこう。俺もハッキリせず悪かった。君を俺の嫁にするつもりは全くない。両親が最近他の縁談を持ってきていただろ。それはね、父は君達秘書課の女性を候補から外したんだ」
「……え?じゃあ、香月さんと結婚することはないんですね?」
「それはイエスとは言えないな。まだわからない」



