「父さん。その言い方は卑怯だ。先に裏切ったのは父さんだ。日傘さんどころかこいつまで支社へやってしまった。それに辰巳を利用していたのは父さんだ。俺と父さんの板挟みで辰巳はこんなに痩せたんだ。そのくらいにしてやれよ」
私はびっくりして固まった。辰巳さんが総帥に言った。
「総帥。香月は私の大学時代からの後輩です。支社へやりたくはなかったですが、でも彼女を辞めさせられるよりはいいと思い、あの時は秘書室長にお願いしたんです。支社の部長横領の証拠固めも彼女の功績ですよ。彼女を認めて下さい。仕事が出来ることはよくご存じですよね」
辰巳さん……。嬉しくて涙が出そうだった。
「父さん。彼女を秘書において今後は俺のやり方でやっていく。しばらく様子を見てくれないか。父さんの仕事を引き継いでいく重要な時期だ。それと縁談のことだけど、しばらくはやめて欲しい。忙しいのもあるが、実は心に決めた人がいる。そのうち紹介できるようにするから待っていてくれ」



