少しして隣の部屋の電話の音が聞こえた。急いで立ち上がり席へ戻ろうとしたら、久しぶりの毛足の長い部屋のジュータンに足を取られた。
「あっ!」
転びそうになった私を崇さんが立ち上がって腕を引っ張ってくれた。弾みで彼に抱きついてしまった。
「っと……危ないな。大丈夫か?」
「すみません。ありがとうございました」
歩き出そうとしたら電話が切れてしまった。頭の上から声がした。
「香月」
頭を上げて見ると彼が右手で私の背中を支えて、左手は私の右腕をつかんでいる。
「はい……」
「常に側にいるんだぞ」
「え?」
「今日からお前は俺のものだ。やっと……」
そう言って、そっと私を抱きしめた。彼の香りに包まれて、私の頭は混乱した。先週のホテルでのことが頭をよぎった。
「さあ、父さんの所へ行こう。はっきりさせておかないとな」
彼は私の背中を押して部屋を出ると、総帥のところへ向かった。緊張する。崇さんがノックをすると、辰巳さんがドアを開けてくれた。
「おはようございます」
「来たか。香月君、久しぶりだな」
「はい、急に戻ることとなりました。今日からまたよろしくお願い致します」



