「まあ、忙しいのはしょうがないだろ。彼が忙しくなかったらうちは潰れる。それにお前のことは何が何でも秘書にする気だろ。俺のこともまるでライバルみたいに睨んでるからびっくりしたよ」

「そうよ、菜々ちゃん。とにかくすぐに連れて帰るから文句は言うなって、一昨日も支社長が言われてた」

「本当のところは行けばわかるだろう。問題は御曹司じゃなくて戻ってからの環境だろ?彼はお前の味方で何でもしてくれそうだけど、元いたところが大変だったんだろ?」

「……その通りです」

「なんかあったら連絡してね。憂さ晴らしして愚痴聞いてあげるよ」

「あー、ありがとう佳奈美さん」

「俺の愚痴も聞いてくれよ。きっとお前から難波に変わったら、俺には辛い毎日が待ってる……」

「……なんですってええ?」

 赤くなって酔っ払っている難波さんを坂本君は横目で見ている。

 この平和な風景も終わりだなと、とても名残惜しかった。戻るところに平和はない。きっと戦争だ。冗談抜きで武装していかないといけないかもしれない。

 翌日、私は本部に出る時間が早いし、週の頭なので皆一次会でお開きとなった。楽しい支社生活に感謝しかない。みんなに花をもらったが、こちらこそ何か返したかった。そのうち本部から美味しいものでも送ろうと決めた。