財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す


 坂本君も飲みながら答えた。

「あー、行きたくないよー。支社楽しかったのに……」

 お酒が進んだのもあって、私の心の声が漏れてしまう。佳奈美さんが抱きついてきた。

「私だって本部へ行って欲しくないよ。菜々ちゃん、話が合うから楽しかったし、ずっといて欲しかった。仕事出来るからさ、助かったもん」

「あー、佳奈美さんー!」

「菜々ちゃーん!」

 二人で抱き合う。私も落ち着いた大人の佳奈美さんが大好き。きっとこれからもプライベートでお付き合いすると思うな。

「まあ、なんだ……香月もさ、とにかく嫌なら戻ってこい。俺らはいつでも大歓迎だ!」

「またまたあ。よく言いますよね、香月さん。あんなイケメンの御曹司秘書なんて、やめる気ないでしょ?私だったら大喜びですよ。香月さんったらそういうところが嫌みなんですよ」

「難波さん。あ、の、ね……あなたは彼の本性を知らないからそんなことが言えるのよ。あの人は結構な皮肉屋さんなの。それにスケジュール表見たら卒倒するよ。天下の榊原の御曹司だよ。数日秘書を変わったことがあったんだけど、めちゃくちゃ大変だったの。だから、いやですって今回も即答したんだよ」