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「ちょっと待ってー、瑛太君」
「早く早く。急がないと取られちゃうよ」
私の手を引きながら前を行く大きな背中。身長は変わらないはずなのに二歳年上の君はやけに大きく見える。
「ほら、着いた」
目的の場所についたとたん、握られていた手はぱっと離された。その手をものさみしく思い見つめながら、君につられて上を眺める。
「うわぁ、綺麗」
頭上には満開の桜が咲いていた。
「でしょ。ここの桜ずっと彩葉に見せたかったんだ」
そうやって微笑む君の笑顔が眩しくて私は君の笑顔から目が離せない。
「来年も、そのまたずっと先も一緒にここに来ようね」
「うんっ」
二人で交わした約束は雲一つない空に消えてった。
◇