あれが経済界トップで今後を担っていく御影家のご令息。
一般人であれば、通常関わることのない人。
わたしだってたまたまこのパーティーに参加したから姿を見ることができた人。
彼はそういう特別な人なのだ、とお父さんは言っていた。
しばらくしてお父さんが御影様のお父様にご挨拶をした際に隣に立っていた彼に対して、当時小学生だったわたしは失礼がないように「初めまして、朝見と申します」と言い、ぺこりと頭を下げる。
すると冷たい氷のような瞳が数秒わたしをじっと見つめた後「初めまして、御影と申します。よろしくお願いいたします」と頭を下げてくれた。
やっぱり、礼儀はきちんとされているんだな、なんて呑気に考えていると、ばちりと視線がぶつかった。
そして、光を宿さない漆黒の瞳がすうっと弧を描いた。
その表情の変化に小学生ながらどきり、とした。



