リビングに取り残されたわたしと柴田さん。

柴田さんはほっぺたが取れそうなくらいニヤニヤとしている。



「正直あんな御影は俺も初めて見たよ。御影はさ、君が思ってる以上に君のこと考えてると思うから安心して」



それだけ言うと、柴田さんも御影さんの後を追うように出て行った。

色々言われすぎて頭がパンクしてしまいそう。

お弁当が美味しかったってまさか……。


わたしは急いで冷蔵庫を開けた。

すると、今朝入れたはずのお弁当がどこにもなかった。


「た、食べたの!?」


いや、御影さん用に作ったから食べてもらえたなら光栄すぎるんだけど、お口に合ったかな。

お世辞で美味しかったって言ってくれたのかもしれない。

それでも、嬉しかった。
誰かに料理を褒めてもらったことなんて家族が亡くなってから一度もなかったから。


不意に今朝のキスや手のぬくもりを思い出して、かあっと顔が熱を帯びていく。


御影さん、わたしもきっと御影さんが思っている以上にあなたのことで頭がいっぱいです。