「アイツ、言い方がいちいち冷たいでしょ。嫌だったすぐに言ってね。俺が飛んでくるから」
「おい、柴田。あんま調子乗ってるとクビにするぞ」
笑顔なんて一切ない表情で地を這うような低い声で言った御影さん。
どこから見てもこの顔は本気だ。
「うおー、怖い怖い。冗談だよ、御影」
「なら、さっさと仕事行くぞ。夜は会食だっけ」
「ワイコーポレーションとの会食が19時から」
「了解」
二人は仕事に戻るのか崩れたスーツを綺麗にして、荷物を持った。
もう行っちゃうのか……ちょっと寂しいな。
だけど、寂しいと思ってしまっていることが顔に出ないように平然を装う。
「23時には戻るから」
「はい、お気をつけて」
「ん」
短い返事をしてわたしの横を通り過ぎようとした御影さんがふと立ち止まってこちらを見た。
「どうかしました?」
「弁当、美味かった。じゃあ行ってくる」
それだけ言うと足早に家から出て行ってしまった。



