きっとお父さんもお母さんもわざと借金を作ったわけじゃないもん。
誰かのために、と思って連帯保証人になったんだよ。
結果は裏切られちゃったけどさ。
「え!そうなの!?お化粧直ししとかなきゃ」
「やだなあ。わたしたちみたいなのを御影家のご令息様が相手にするわけないわよ」
「そんなわかんないでしょ。人生一発大逆転があるかもしれないし」
キャッキャとはしゃぎながら奥のメイクルームへと消えていった二人。だけど、わたしはそんな二人のことなんてもうどうだってよかった。
―――御影家のご令息。
その言葉を聞いてどきり、と心臓が跳ねた。
瞬間、それだけが頭の中を支配してしまう。
人生で一度だけ、この目で彼の姿を映したことがある。
あれは両親の会社が倒産する前に行われた誰かの誕生パーティーに出席した時だったはず。



