今宵、甘い影に誘われて



確かに最近は愛のない行為も普通だって聞いたことあるけど、御影さんくらいの人なら女性に困ってないだろうし。


「お前さ、俺の嫁になった自覚あんの?」


御影さんの低くて落ち着いた声が降ってくる。

自覚があるかないかと聞かれれば、正直ない。

昨日の今日であの地獄みたいな日々から抜け出したという現実にまだ追いつけていないもん。


静かに首を横に振ると「ふーん」と冷たい返事が落ちてくる。


き、嫌われちゃったかな……?

できるだけ嫌われないように仲良くなりたいな、なんて恐れ多いことを思っちゃってるんだけど。


「あ、あの……んぁ……っ」


言葉を発しようとした瞬間、首筋に柔らかいものが触れて自分でも聞いたことのないような甘い声が洩れた。

な、なに今の……!?


「へえー、声まで可愛いんだ」


視線の先で御影さんが満足げに口角を上げた。


無理無理……!
恥ずかしくて顔から火が出ちゃいそう。