今宵、甘い影に誘われて



出会ったのは昨日だけど、御影さんは無駄なことは嫌いそうだし。


「じゃあ、本気なのがわかるよね。はい、書いて」


またしても貼り付けたような不敵な笑顔を向けてわたしにペンを渡してくる。


それを受け取って“朝見優生”と書く。


まさか自分がこんな形で婚姻届に名前を書くなんて思ってもいなかった。

婚姻届に名前を書くときはもっと幸せな気持ちでいっぱいだと思ってたのにな。
今は何とも言えない気持ちだ。



「書けました」


「おー、えらいえらい」


「めちゃくちゃ棒読みですよ」



まったく感情の籠っていない感じで言われても全然嬉しくない。



「バレた?」


「バレバレです」



わたしがそう言うと、御影さんはふっと目を細めて笑った。

その刹那、ドッドッドッとうるさいくらいに鼓動が加速していく。


初めてあんなに人間らしく笑う御影さんを見た気がする。


貼り付けたような、作った笑顔じゃない。

素の笑顔。