今宵、甘い影に誘われて



昔みんなで住んでいた家はここまでセキュリティの高い場所ではなく、ただ家族4人で仲良く平凡に暮らしていた。

会社もそれなりに大きかったけれど、御影様の会社とは全然規模が違うし、足元にも及ばないくらい。


それでもわたしは幸せだった。
戻れるのなら、あの幸せの中に戻りたい。

どうしてわたし一人だけが生き残っちゃったんだろう。



「お前の事情は調べた。同情はしない。だけど乱暴もしないから安心しろ」


「……ありがとうございます」



調べられたのならきっとわたしが家族の中で唯一生き残ってしまって借金を背負わされたという事実も知られているということ。

それでも御影様はどうしてわたしなんかを選んでくれたんだろう。


ますます、わからない。


でも、同情をしないというところが御影様らしいなと思って少し笑ってしまった。



「何笑ってんの」


「あ、いや。すみません。同情しないっていうのが御影様らしいなって」