恐る恐る部屋のドアを開けるとそこにはスーツ姿でピシッと決めた御影様がダルそうに立っていた。



「あ、あの……」


「不用心」


「え?」


「今、誰かも確認しないで開けただろ」


「あ……」



確かにわたしは御影様だと思い込んでそのままドアを開けてしまった。

でも、それのどこかダメなんだろう……?


「俺じゃなくて変なやつだったらどうしてたの。ったく、世話の焼けるやつだな」


そういうとわたしの部屋に入って、ぽつんと置かれたキャリーケースを持って「行くぞ」とだけ言うとそのまま部屋から出て行った。


完全に置いてけぼりのわたしは慌てて御影様の後を追った。

外で待っていたのは黒いピカピカの運転席に座っている御影様だった。


キャリーケースはトランクに積んでくれているのかどこにも見当たらなかった。


さすがエリートと呼ばれるだけはある。


行動に隙がない。