「助けてくださってありがとうございました。御影様ってお優しいんですね」
と御影様にしか聞こえないような小さな声でお礼を口にして、去ろうとした瞬間、腕を掴まれ動きを制された。
え……なに?
思わず、きょとんとした表情で固まっているとこの世の物とは思えないほど綺麗な顔がずいっと近づいてきて、
「22時にこの店の裏で待ってろ。絶対だ。破ったら……わかってるよな?」
と、耳元で絶対を命じるような圧のある声で囁くとわたしの元から去って、元のソファへと腰を下ろした。
どくん、と心臓が大きく跳ねた。
何されるんだろう……やっぱり酷いことかな?
せっかくの接待なのにわたしのせいで台無しになっちゃったし。
本来ならワイワイと楽しめるはずの空間に今は恐ろしいほど冷たい空気が流れている。
「御影様、この度はご無礼を申し訳ございません……」
「もういい。最初から誰もお前に期待なんてしてない」



