そんな先程とは違う棘のない声が耳に届き、視界の端に黒い人影が映った。
アルコールではなく、ホワイトムスクの甘い香りが鼻を掠める。
どうして……どうしてわたしなんかのこと聞いてくるの?
もしかして脅そうとしてる?
それともわたしの体を使ってお金儲けをしようとしてるとか。
想像するだけでゾっとしてしまうけれど、答えないともっと酷い目に遭うかもしれない。
「……五千万円です。あ、でもこれも弁償だからもっとか」
口にしただけで何だか笑えてきた。
そんな大金、一体いつになったら返済し終わるんだろ。
ここ5年間、生活費以外は贅沢もせずにひたすら働いて返してきたけど利息がある限り、終わりが見えない。
高校に行かずに働くことも考えたけれど、中学の時の担任の先生が高校だけは出ておきなさいとあまりにも勧めてきてから学費免除の特待生制度のある学校に通っている。



