御影様たちに深々と頭を下げる。
じっと黒い床を見つめているとじわりと涙が滲んで泣きそうになってくる。
せっかくのお酒が台無しになっちゃったな。
接待なのにこんなことになって本当に申し訳ない。
なんでわたしってこんなに出来損ないなんだろう。
「謝って許されるものか……!いくらすると思っているんだ……!」
怒号が飛んできて、思わず頭を上げると顔を真っ赤にさせて怒っている取引先らしきおじさんがいた。
これ……いくらするんだっけ。
でも確実に言えることはわたしがすぐに払えるような額じゃない。
きっと借金がなかったとしてもすぐには返せないような高級なものなのだから。
「べ、弁償いたしますので……!」
再び頭を下げて、しゃがみ込み破片を拾おうとした瞬間、
「危ないからもういい。持ち場に戻れ」
と、抑揚のないひどく冷たい声が聞えてきた。



