今宵、甘い影に誘われて



さっき自分が置いたばかりの高級シャンパンに手が当たって、転倒するのと同時に床へと落ちてしまった。


う、嘘……。


突然のことに状況を読み込めず、その場でしばらく固まったまま、割れたシャンパンを見つめていると


「あんた何やってんの?可哀想にまた借金増えたね」


リアさんが小さな声でそう言い、ざまあみろとでも言いたげな顔をして嘲笑う。

きっと、わざとだ。
わざとわたしに足をぶつけてきたんだ。


この場にお酒を持ってこさせたのも、全部わたしをここから追い出すため。やめさせるため。


VIP席で、ましてやあの御影様の前で粗相をやらかしてしまえば、さすがのママも黙ってはいないだろう、という考えなのかもしれない。


そんなことより謝らなきゃ!


「も、申し訳ございません……!」


起きてしまったことを悔やんでも仕方ない。

とにかく謝ることが最優先だ。