急に不安の波が胸に押し寄せてきてぶわりと変な汗が出てくる。
「で、では……失礼いたします」
この場所から逃げたくなって立ち上がろうと動いた瞬間、隣にいたリアさんが自分の足を動かした。
その足がわたしの体に当たり、視界がぐらりと揺れる。
あ、ダメだ……コケる。
そう理解しても、今更崩れたバランスを戻すことができない。
ゆっくりと倒れていく自分の体。
たった一瞬のことなのにまるでスローモーションのように思えた。
そのまま大人しく倒れていればよかったのに、どうにか転ぶことを阻止したくて手を動かしたのが悪かった。
―――パリンッ……!
部屋にお酒の入ったビンが割れる硬質な音が響く。
よろけて転んだ弾みで尻もちをついたはずなのに全然痛くないのはきっと目の前に広がる悲惨な光景のせい。
アルコール特有のツンとした香りが鼻を突く。
……こぼれたお酒の中にビンの破片が散らばっている。



