「何笑ってんだよ」
「わたしは琉世さんしか見えてないから安心してね」
「っ、」
琉世さんと見つめ合ったまま、そう言うと彼はなぜかふいっと視線を横に逸らしてしまった。
「どうしたの?」
「お前、不意打ちとかまじ反則」
手の甲で口元を隠している琉世さんの顔はほんのりと赤く染まっていた。
結婚はしているし、夫婦だけど気持ちは繋がっていない。
琉世さんはわたしにだけ甘い顔を見せるけど、決定的な言葉は言わない。
いつか、いつかこの一方通行な想いが届いて本当の意味で愛しいあなたの“特別”になれたとき、「好き」だという言葉が聞けたらいいな。
そのあと二人で食べたオムライスは今まで1番美味しい味がした。