今宵、甘い影に誘われて



期待の眼差しで御影さんがこっちを見てる。

心臓が飛び出てしまいそうなくらいドキドキしてるよ。



「み、御影琉世……さん」


「ははっ。なんでフルネーム」



おかしいだろ、なんて言いながら笑っている御影さん。

緊張でこっちはそれどころじゃなかったんだから仕方ないでしょ。



「琉世でいいから」


「でも……!」


「アイツのことは“くん”で呼ぶくせに俺はいつまで苗字に“さん”なわけ?」


「アイツって?」


「真田とかいうやつ」



むすっと子供のように膨れて言った彼にわたしは思わず、くすりと小さく笑ってしまった。

さっきまでの大人っぽい御影さんとは大違いだ。

わたしだけが知っているであろう彼の一面に心が弾む。