いつもなら高額のシャンパンが入ると、ベテランの黒服さんが持って行くけれど、今日はリアさんの指示ということでわたしが持って行かなくちゃいけない。
正直、気が重いし行きたくない。
もし、落として割ったなんてなったらシャレにならない。
それこそ、落としたシャンパン分の借金も加算されてクビになってしまう。
それだけは何とか避けたい……。
頑張れ、頑張るんだ、わたし……と何度も自分に暗示をかけて指示されたVIP席へと向かった。
◇◆◇
―――コンコンコンッ。
「失礼いたします」
震える手でドアを開けた先にはリアさんと他2名のキャストと取引先であろうスーツを着た中年の男性と数年前に見た時よりもさらに美しさと気高さに磨きのかかった彼―――御影様がいた。
やっぱりかっこいいなぁ……。目の保養。
整った綺麗な顔をちらりと盗み見ながらわたしはリアさんの隣に移動し、地面に左膝をついた。



