「わかりました」
誰もいなくなった部屋にわたしのため息交じりの声だけが響いて空気の中に溶けた。
リアさんというのは誰もが振り向くほどの美女で、接客スキルや話術にも長けたこの店で一番人気のキャストのこと。
でも、わたしはよく思われていないようで普段は存在していないかのように扱ってくるのにこういう時だけ仕事を振ってくる。
確かに華やかなこの世界でこんな借金まみれでろくに可愛くもなくて話術もないわたしなんて場違いだというのはわかってる。
でも、わたしだって好きでやってるわけじゃないのに……。
ううん、わたしの努力が足りないからダメなんだ。
もっともっと頑張っていつか認めてもらえるように頑張るしかない。
弱気になる心を奮い立たせ、注文の入ったお酒の銘柄を見て目を見開いた。
そこに書かれていたのはこの店で一番高いシャンパンだったから。
一晩でこの値段……すごい。



