「そろそろ、敬語やめなよ」
甘く溶けるような時間が終わり、薄暗い部屋でベッドに寝転んだまま、わたしのことを後ろから抱きしめながら御影さんが言った。
「え、それは難易度が高いです」
「なんで?」
「だって、御影さん年上ですし……」
「夫婦にそんなの関係なくない?」
いや……世間的にはそうなんだけど。
わたしと御影さんとではあまりにも立場が違いすぎる。
借金を肩代わりしてくれた上にタメ口で話すなんて図々しすぎると思う。
「次、敬語使ったらもう一回な」
「もう一回ってなにを……」
「もっかいシよってこと」
なにをするんですか、と聞く前に御影さんが耳元で意地悪っぽく囁いた。
「っ、」
その言葉にボボボッと顔が一気に赤みを帯びていく。
御影さんの吐息が触れた耳がじんじんと熱い。
愛がないとはいえ、嘘でもあんなに甘く愛されたあとにもう一回なんて言われたらもう脳が溶けてしまいそうだ。