ただ、彼は他人の人生など考えもしない冷酷無慈悲な人間であり、平気で人を殺せるようなどこまでも恐ろしい人だと風の噂で聞いたことがある。
彼はわずか20歳という若さで代々受け継がれてきた御影家当主である証のクリスタルリングを継承したというのだからその実力は本物であり、わたしのみたいな者からしたら雲の上のような存在の人ということは間違いない。
……なんて、どれだけ彼を知ったところでわたしなんかが近づけるような人ではないし、黙って今日も働こっと。
明日は土曜日で学校は休みだから単発でバイトでも入れようかな。ここは夜だけだし。
なんて考えていると、
「ねえ」
「……はい?」
突然、後ろから声が聞えてきた。
振り向くと、鋭い視線でわたしのことを見ているレオナさんがいた。
「リアさんがVIP席まであんたに酒を持ってこさせろって言ってからよろしくー」
にやり、と不敵な笑みを残して店内へと戻っていった。



