塾では受験に失敗したことも、名字が変わった事も知らない人だから気が楽だったのだ。
立夏はスマホを持たせて貰えない。
でもそれは自分が受験に失敗したからだと思っているので高校デビューするまでは我慢すると決めている。
人生のうち三年…
つまらない中学生活を終えればいいだけだ。
別にいじめられてる訳じゃない、1人でいるだけだ。
そのうち、新しい父ができて、家に住み始めた。
どもりながらも話したが、新しい父は医者らしく、治るよと言ってくれたきりだ。
それからは母もあまり怒らなくなり、私のどもりも少し落ち着いてきたのだ。
今は志望校に受かることを頑張るのみだ。
布団に入り目を瞑ると雅人くんと手を繋いだ事を思い出した。
優しい人……
傘に一緒に入った時も近くてドキドキした。
自分の心臓の音が聞こえるかもと思ったくらい…
きっと、雅人くんはみんなにも優しいんだろうな……
綾ちゃんと話してるのも楽しそうだしね。
立夏はそのまま眠りについた。
梅雨明けもして夏休みが近くなった頃、塾ではプリントをもらった。
「勉強合宿かー、今年は参加しないとな」
「そりゃ、部活引退したんだから当然よねー、立夏」
「大変だけどね」
「プリント見ればわかるよ、何だこの勉強時間」



