「立夏が話せる男子がいたなんてびっくりしたわ」
「雅人くんは一年の時から塾で隣の席だから…話せる」
「そう…」
「志望校も同じなんだよ」
「…気を抜かないようにね」
「…はい」
車から降りて家に入るとリビングでテレビを見ている義父がいた。
「おかえり」
「ただいま」
それだけ話すと立夏はお風呂場へ向かう。
お風呂から出るとリビングでは2人の会話が聞こえてくる。
そのまま立夏は自分の部屋へ行った。
実は立夏は中学受験に失敗している。
小学校の時には近くの塾へ通っていたが、私が落ちたから塾を今の駅近くの進学塾に変わらされたのだ。
私が受験を失敗したのはメンタルだと思っている。
小学生になった頃から両親の仲が悪くなったのは子供心に感じていた。
ママもよく泣いてたし、今になればパパの浮気が原因だったみたいだが子供の私にはまだよくわからなくて勉強をすると言って部屋にこもるしかなかった。
1番の癒しは飼っていた犬だった。
散歩は立夏が行っていたし、凄く可愛がっていたのだが、受験の少し前に病気で亡くなってしまった。
凄く落ち込んだし、パパも家から出て行ってしまった。
ちょうどその頃の受験…
子供ながらにこれからどうなるんだろう…
このまま私立の中高一貫校に行っていいんだろうかと、不安な日々だった。
受験に落ちてからは友達ともあまり話さなくなり、話すとあまりの喋りなさすぎてどもりはじめた。
それがまた恥ずかしくて学校では1人で過ごす事が多くなった。



