手すりと反対の手を繋いでゆっくり階段を降りた。
「ありがとう」と言うと手を離された。
もうちょっと繋いでいたかったなと思いながら下には塾生がたくさんいたから仕方ないだろう。
駅とは反対の方に少し歩くとパーキングがあり、そこにいつも立夏の母は停めて待っている。
相合傘にして足元を照らしながら一緒に歩いて車のドアを開けた。
「お母さん、隣の中学だから家は多分帰り道だと思うから途中に降ろしてあげていい?」
「いいわよ」
「すみません、電車停まってて……お願いします」
車の中で名前を名乗り、自分の家の場所を告げた。
「近いね」
「うん、小学校も中学校も迷ったんだ」
「私なら近くを選んじゃうけど……」
「小学校の近くに祖父母の家があって、何かあった時に迎えに行けるからって一応校区の小学校にしたって聞いた」
ちょうど国道で校区が分かれて雅人の家は立夏の学校の方が距離的には近かったのだ。
家まで送ってもらい、お礼を言って車から出た。
「じゃあ、また」
「おやすみ」
ありがとうございましたともう一度言って家に入っていった。
「家……」
「え?」
「電気がついてなかったわね、誰もいないのかしら」
「今日は夜勤の日でいないんだって」
立夏は前に母親は看護師をしていると雅人から聞いていたから答えた。



