次の日以降、早苗ちゃんたちは私に話しかけに来なくなった。
結局元の一人に戻ったけれど、思ったより辛くなくて。
自分を偽って彼女たちといることがどれほど苦痛だったのか、私はその時気づいたのだった。

それに。
秋山が私に話しかけてくれたおかげか、早苗ちゃん以外の女子も少しだけ私と話してくれるようになった。

そうして、無事に冬休みを迎えて、いつのまにかクリスマスになっていた。


映画が併設されているショッピングモールに着くと、ショッピングモール入口横のクリスマスツリーのそばですでに秋山は待っていた。
その姿を見るだけでそわそわと心が揺れて髪がおかしくないか少し心配になる。

「秋山、お待たせ」
少し緊張しながら声をかけると、スマホをみていた秋山は顔を上げて私を見た。
「おう」
「早いね」
「今着いたとこだよ」
そんな会話を交わして、そのまま歩き出す。

映画のチケットを買っていると、ぽんと肩をたたかれた。
振り向くと、なっちゃんがいた。
「なっちゃん」
突然声をかけられて驚くとなっちゃんがにやにや笑いながら私を見ていた。
いや、私たちをみていた。
「秋山とデート?」
こそこそ耳打ちしてくるなっちゃんに、私はかあっと頬に熱が走る。
「ち、ちがうよ! 遊んでるだけ」
「クリスマスに? ふたりで?」
「なっちゃんこそ、デート?」
話題をかえようとなっちゃんにも問いかける。
なっちゃんは男子と一緒にいて、男子は気まずそうに目線をさまよわせていた。
その男の子は、あの時なっちゃんを追いかけていた男の子だ。
なっちゃんは、えへ。と頬を緩ませて、うん。と頷いた。
「いってなくてごめんね。最近、付き合いだしたの」
「そうなんだ。おめでとう」
「うん。紹介するね。小瀧だよ」
なっちゃんがぐいっと小瀧と呼ばれた男の子の裾を引っ張って、紹介する。
「小瀧、この子春川実咲ちゃん。友達」
「ども。秋山の彼女?」
小瀧くんは秋山をちらりとみながら問いかける。
「違う。友達」
秋山がぶっきらぼうに返すと、ふうん。と小瀧くんは私と秋山を見比べた。
「実咲ちゃんも映画?」
「うん。今日公開のやつ」
「私たちもさっきみてきたよ~」
「あ、そうなんだ」
「うん。面白かった! また感想言い合おうね!」
「うん!」
「それじゃあ、秋山と楽しんでね」
なっちゃんは楽しそうな笑顔を浮かべながら、バイバーイと小瀧くんと去っていった。